この記事では、演習書ほど気を張る必要のない、法律学習に役立つ本を紹介していきたいと思います。
つまり、基本書でも演習書でもない、法律学習に役立つ本を紹介したいということです。
前回は
司法試験対策用の演習書にレビュー的な記事を掲載しました。
collegekunchannel.hatenablog.jp
これですね。
これらは、ザ・演習書です。ガチ物でした。
今回は力を抜いて紹介をしていこうと思います。
【1】 労働法の正義を考えよう
労働の正義を考えよう--労働法判例からみえるものを読んで見ました。
コンセプトは、条文に書かれていないところにある問題に目を向けようとされています。
本書に於いては、条文の趣旨や解釈等は申し訳程度にしか書かれていません。その分、条文に書かれていない問題にツッコミを入れるのが本書です。
講義風に書かれているので、基本書の堅苦しさは一切なく、読みやすいです。
感覚的には、頭のいい人の講演を聞いている感じに近いです。
自然と引き込まれていきますね
論証ブロックで勉強しているだけでは、まず学ぶことができない、労働法の本質を知ることができます。 学者ならではの、鋭いツッコミが痛快。笑
是非、試してほしいです。
【2】 小説で読む民事訴訟法
本書は、小説を読みながら民事訴訟法の基礎基本を学習することができるように書かれたものです。
主人公は、法学部生で、この法学部生がバイト先の法律事務所で様々な事件と遭遇し、その中で、民事訴訟法上の基本概念を学習していきます。
もちろん、小説として楽しむことができますし、実際に弁護士の実務がどのような流れで行われているのかを理解することができます。
理解の難しい民事訴訟法ですが、楽しく学べるのは嬉しいですね。
内容はこんな感じです。
「死刑はやむを得ないが、私としては、君には出来るだけ長く生きてもらいたい」(死刑判決言い渡しの後で)。裁判官は無味乾燥な判決文を読み上げるだけ、と思っていたら大間違い。ダジャレあり、ツッコミあり、説教あり。スピーディーに一件でも多く判決を出すことが評価される世界で、六法全書を脇におき、出世も顧みず語り始める裁判官がいる。本書は法廷での個性あふれる肉声を集めた本邦初の語録集。これを読めば裁判員になるのも待ち遠しい!
(「BOOK」データベースより)
どうでしょう。気になりませんか。
もっとも題名にあるような「爆笑」な「お言葉」ばかりではありません。
そんな軽い内容でもないですね。悲痛な事件や少年事件等で発言されたものが多く掲載されていますから。笑
裁判は形式的客観的になされないといけないけど、形式的に判決を出せるようなものでもないそんな裁判官の葛藤が垣間見える本です。
法で人を裁く限界を感じさせるようなものとなっています。
本の構成としては、見開きの右ページにお言葉、左ページにその発言の背景や事案の概要等の解説が記されているので、非常に読みやすくなっています。
少し「お言葉」の一例を紹介しましょう。
「犬のうんこですら肥料になるのに、君たちは何の役にも立たない」 とか、
「言葉は悪いが、単なるロリコン、単なるスケベおやじ」 とか、
どうでしょう。
裁判官ってこんなこと言うのかよって思われた方が多いのではないでしょうか。笑
その他にも名裁判官の面白発言、強烈に皮肉った発言、裁判官の人間味あふれる発言が多数。 本当に面白いです。 暇つぶしをしたい方、裁判官志望の方、是非読んでみてください。
【4】法を学ぶ人のための文書作法
本書は、法学部や法科大学院で法律学を学んでいる学生で、かつ、文章を書くことに苦手意識を持っている人を主たるターゲットとして書かれた本です。
法律分野と国語教育の研究者がタッグを組んだ今までにない文書作成の本です
三つのパートから構成されており、具体的には以下の通りです。
パート①は「文章というものを考える」
パート②は「明確な文章を書く」
パート③は「さぁ、書いてみよう」
パート①は総論ですね。文書とはなんなのか、法律文章とはどうあるべきなのか。
良い法律文書とはなんなのか、について言及されています。
法律家というのは、事実を法的に評価し、それに対して規範を当てはめることで結論を出していきます。つまり、事実という現実の世界の事象を、法的に評価することで、法律の世界へと導いていくという作業を法律家は求められています。論文の答案で求められていることも同様ですよね。
こういう法律文書としての性質をまず理解した上で、どのような文書を書くべきなのかが書かれています。
この総論部分だけでも、目から鱗でしたね。
かなりおすすめです。
パート②は各論部分です。文章作成の技術について書かれています。
法律文書作成の作法ともいうべき技術が書かれています、常に行為者を明示するとか、新しい概念を使う場合には、定義を提示するとか、接続表現は適切か等
パート③は、実践編ですね。実際に文書を書いてみようというものです。
本書を読んで、確かな表現力を身につけましょう。
井田 良,佐渡島 紗織,山野目 章夫 有斐閣 2016-12-17
【5】100分でわかる企業法務
本書は、いわゆる「企業法務弁護士」として40年間あまり努めてきた弁護士によって書かれています。
主に、会社の取締役やその企業法務としての勤め人を対象に、
100分で取締役の責任やリスクや、法務部としてリスクヘッジについて、理解を深めることをコンセプトにしています。
会社法を勉強をしている学生にとっても有益です。
40年間企業法務弁護士として働いてきた弁護士の言葉には、重みがあります。
また、実務の弁護士が、アパマン判例等をどのように理解してらっしゃるのか、非常に勉強になることが書かれています。
多忙な取締役が新幹線での移動中に読み切れることを想定して書かれているので、
簡単に読めます。また、弁護士の方が書かれていますので、非常に読みやすいです。
会社法に苦手意識を持っている方には、実務での会社法の機能を知ることができ、会社法のイメージを形成することができるので、是非読んでもらいたいです。
成和明哲法律事務所 KADOKAWA/角川書店 2014-05-09
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