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【刑法】強要による緊急避難の書き方・考え方

【事案】

 XはYに息子を誘拐され脅迫されたので、言われた通りに銀行強盗をした。XがYの命令に逆らえば、息子を殺されるのは確実であった。X、Yの罪責を論じなさい。

【解説】

  1.  まず、このような場合に、緊急避難の形式的要件を充足することから、緊急避難は成立するという違法性阻却説と、「不法の側に立つ者は緊急避難を主張できない」とし、期待可能性が存在しないため不可罰となるとする責任阻却説が対立している。
  2.  違法性阻却説によれば、事案のXの行為は緊急避難が成立して違法性が阻却されるので不正の侵害に当たらず(正対正の関係)、銀行は正当防衛で対抗することは許されない。他方、責任阻却説からすれば、不対正の関係になり、銀行は正当防衛で対抗できることになる。
  3.  そして、違法性阻却説を取ると、Yの行為は、強盗の間接正犯が成立することになるが、制限従属説より、Xの行為は違法ではないので、強盗の教唆は成立しないことになる。他方、責任阻却説を取ると、Xは故意ある幇助的道具(その行為を自分のためにしようという意思(正犯意思)がなく、他人のために行おうという意思(共犯者意思)しかない者)となり、Xは規範に直面していると思われるから、間接正犯を認めることは難しくなり、強盗の教唆犯にとどまると考えられる。
  4.  このように強要による緊急避難についてどの立場をとるかによって、理論上、罪責の成否に大きな影響を与えるようである。
  5.  最後に、採点上は、強要による緊急避難の成否が論点と解されていることに気付けるかで差がつくと思われるので、記憶にとどめ何とか引き出せるようにしておきたい。

※事案は、基本刑法I―総論[第2版]より拝借しております。解説は自分の言葉でまとめたものになります。私の使用しているテキストには、論点として紹介されていなかったのですが、マイナーな論点なんでしょうか。それでは。