1 まずはじめに
金融商品取引業者の増加、一般投資家の増加に伴い金商法の重要性は近年増すばかりです。他方、金融商品取引が一般化したことに伴い、新たな問題が毎年のように発生していて、法改正が激しい法律の一つでもあります。また、難解な表現や用語が多用されており、理解が難しい法律でもあります。
重要性は増しているものの、その理解は難しいというのが金商法の特徴でしょうか。
今回は、そんな金商法のおすすめの入門書をご紹介したいと思います。
2 金融商品取引法とは
本書の説明の前に、簡単に金融商品取引法がどのような法律なのか簡単に説明したいと思います。
上述したように、金融商品取引法の条文は、難解な表現、用語が多く、かつ括弧書きが多用されていて、初学者が勉強するのは大変な法律です。
このような難解な法律を理解するためには、まず当該法の目的を把握することが有効です。
そこで、条文を見てみると、
金商法の究極的目的は、①国民経済の健全な発展に資すること、②投資者の保護に資することであることがわかります。
そして、この目的を達成するために、金商法は大きく分けて4つの規制を定めています。
簡単に見て見ましょう。
(1)情報開示規制
金商法上最も重要な規制が情報開示規制です。
企業が行わなければならない情報開示は二つあります。具体的には、株式や社債などの有価証券を発行する際に行われる「発行開示」と、流通市場の投資者向けに行われる「継続開示」です。
(2)金融商品取引業社に対する規制
まず、参入規制を設けています。一定の要件を満たすもののみが金融商品取引行を行うことができるとすることで、投資者保護及び資本市場の健全な運営を確保するためです。
次に、金融商品取引業社に対し、さまざまな行為に関して規制を定めています(行為規制)。その中でとりわけ重要なのが、勧誘・販売に関するルールです。
(3)金融商品取引所の規制
金商法は、金融商品取引所の設立や組織、金融商品市場の開設などに関する規制も設けています。
(4)不公正な行為の規制
金商法は、投資家保護及び資本市場の健全な運営のために、インサイダー取引、相場操縦、風説の流布などを禁止しています。
上記(1)〜(4)について細かな規制を設けているのが金商法です。
3 本書の特徴
本書は「基礎から学べる会社法」の姉妹書に当たるものであり、「基礎から学べる会社法」と同様に、金商法をできるだけわかりやすく優しく、かつ体型的に理解できるような教科書です。
基礎から学べる会社法 第4版
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本書のコンセプトは、金商法の基礎基本を体系的に習得することにあるものの、「発展学習」というコラムでは、難しい問題点や議論の争いの多いところなどを解説がされていて、中上級者にも役立つ内容となっています。
さらに、重要なキーワードは、青字で強調されているため、斜め読みがしやすくなっています。
加えて、図や表が多用されている等、初学者の理解を助ける工夫が随所に見られます。
これから金融商品取引法を勉強するという方には、おすすめです。
また、会社法の理解を深めたいと考えている方にもおすすめです。
会社法の判例でも、先物取引といってデリバティブ取引が問題となることがありますが、そもそもデリバティブ取引がなんなのか、どういうメリットデメリットがあるのかを知らないと、判例を理解することは難しいと思います。
金商法は、このような取引を規制している法律ですから、金商法を勉強すれば、当然デリバティブ取引を理解できますし、ひいては会社法の理解も深まります。
基礎から学べる金融商品取引法 <第4版>
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